就職・転職と恋愛
今回の内容は私と恋愛観の異なる方には納得されない話かもしれません。なのでこれまで思いながらも言葉にせずにきました。今回は敢えて、言葉をつむいでみたいと思います。
就職や転職は恋愛と同じ(似てる)というお話をされる方がいます。
「ビビッとくるかこないか直感も大事だよ」
「付き合って(入って)みないとわからないじゃん」
というように、
考えすぎて悩んでいる人に対して背中を押すときに使うことが多い言葉のように思います。
確かに、どこかど勇気を出して勢いをつけて決めることが必要なシーンはたくさんあります。
その人と一緒にいたいと思えるか、一緒にいて居心地が悪くないか、ワクワクしたりドキドキしたりするか、そんな言葉も、就職転職や恋愛とが合致するのかもしれません。
ですが、
私は就職・転職と恋愛、ましてや結婚とは、同じでもなく、似てもいないと考えています。そして、この似ている感覚が、思考と判断を甘く脆く厳しいものにするとすら思っています。
直感に甘えて考え抜くべきことを考え抜かない。考えることに耐えられず勢いに委ねてしまう。
就職や転職について
「恋愛のように、直感や勢いが大事」
ではまったくないのです。
採用や人材紹介の仕事を重ねる中で、考え抜くこと、悩み抜くことから逃げ、直感や勢いに逃げ、覚悟や論理や腹くくりのない決断をするひとが多いことを目の当たりにしすぎたからこそ、それを後悔する人をも目の当たりにしすぎたからこそ、強くそう伝えたいのです。もっと、考え抜かなければならない。自分自身と向き合わなければならないのです。恋愛を盾に、直感や勢いを肯定することは、本質的にずれているんです。
誤解を招くかもしれませんが、あえて表現するのであれば、恋愛は相手のために、就職や転職は自分のためにするものです。
そんなことはないと思われるかもしれませんが、会社のために「就職」や「転職」をする人はいません。与えられる仕事や環境、報酬のため、自身の成長のため、社会に与えられる何かのためにするのだと思います。
恋愛、特に結婚は、相手のためにするもの。与えられるためにではなく、与えるためにするもの。
綺麗事だと感じられる方がいてもおかしくありません。恋愛だって結婚だって自分のためにするんでしょう?と思われる方もいると思います。でも、恋愛や結婚はお互いのGive&Giveの上にしか成り立たないもの。自分のためではない、相手のためにあれて初めて成り立つのが恋愛であり、結婚なのです。
では会社はどうでしょうか。
会社も社長もあなたのために存在するわけではありません。会社は会社のため、社会のためにあるのであって、あなたのためではないのです。絶対的にGive&Takeだと考えないといけない。あなたが会社にGive&Giveになったとしても、会社があなたにGive&Giveになることはないのです。
自分のためにあってくれない会社のために、自身が主導権を持たずに捧げることを決めてしまう。入ってみて、面接で会った人がその会社の全てではないことを知る。会社の関心は自分ではなく、会社自身や事業であり、自分のために何かをしてくれないことを実感する。自分は会社のために入ることを決めたのに。思っていたのと違う。
恋愛とごちゃ混ぜになると、会社にGive&Giveを求めてしまいます。Take&Takeを当然とすら思ってしまいます。そして、そうなる人が活躍することも評価されることもほぼありません。あっても不健全で結局は破綻します。
自分自身の属するコミュニティを愛する気持ちは、おそらく人が人として生きるうえで必然であり、不可欠ですらあるのかもしれません。結果として、入ってみて、会社と仲間を好きになり、そのために働くことはあろうかと思います。そして、それはとても幸せなことだとも思います。
ただ、それは就職や転職とはまた別の話なのですが、それが混同してしまうことに落とし穴があると考えています。
一緒に働く人も変わりつづけます。その会社のビジョンも事業も組織も制度も変わり続ける。採ったときのあなたの思いなど関係なく。だからこそ、会社に、直感や勢いに頼っても、報われないことなど数多あるのです。
そんな不安定で寄りかかることのできない相手を認めたうえで、自身がどうあればよくて、そのためにどうすればいいのか、その会社の仕事で何を得られ、得たいのか、どう得るのかを考えることが大切であり、それが給与の対価として返せるものであって初めて成り立つのが、雇用する会社と雇用されるあなたの関係であり、それ以上でもそれ以下でもないのです。
そして、別れる前提の恋愛や結婚はほぼないのに対して、会社を辞める前提の就職転職はむしろ十分にあり得ます。むしろ、会社は長くあなたの面倒を見ることが物理的にできないのです。あわよくば定年までいられたら、そんな会社への期待がある人もいるかもしれませんが、それが受け身で叶うことは、奇跡的で非現実的です。
だからこそ、直感や勢いに寄りかからず、何があっても強く立っていられる覚悟と力が必要だと考えています。
就職・転職と恋愛はそもそもが違うもの。
とはいえ、もちろんときに「就職・転職も恋愛と同じ」という言葉が人を救ったり勇気を与えたりもしているのだろうと思います。結果いい現在や未来が築けるのであれば、それがすべてであり否定できるものではありません。
でも、もし考え抜いた実感がなく、直感や勢いに寄りかかり逃げる感覚があってモヤモヤするときには、私のような人を使ってほしいのです。
結論が変わらなくても、覚悟ができているか否かで、日々の充実度も仕事のパフォーマンスも変わり、何より後悔が大きく減ります。
あらゆる決断に、自立した前向きさがありますように。
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